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トピックス 2014年5月

固定資産税還付の道が開けるかも?注目の新高裁判決!

「既存家屋の評価を争う際に、建築当初の評価の誤りを無制限に主張できるとすると、効力の確定した建築当初の評価額についての争いが蒸し返されることになり、固定資産の評価に係る審査申出制度を定めた地方税法の趣旨に反する。原則としてこれを禁じ、例外的に建築当初において適切に評価できなかった事情がその後に判明した場合や、建築当初の評価の誤りが重大で、それを基礎に比準価格方式により評価することが適切な時価の算定方法として不合理であると認められるような場合を除き、建築当初の評価を無制限に争うことを認めるのは相当でない。」

東京都主税局が金科玉条のごとく唱える平成17年10月21日の東京地裁判決です。(その後、平成18年6月28日東京高裁判決による控訴棄却、平成19年12月4日最高裁判決による上告棄却により確定)
 
東京都都税事務所に審査申出を行うと、どんなにこちらの主張内容が正しく、抗弁のしようがないものであったとしても、最後には東京都固定資産評価審査委員会が上記判例を引用した後、「建築当初において適切に評価できなかった事情や、建築当初の評価の誤りが重大である場合等にあたりません。従って本件家屋の評価は、適正、妥当なものです。よって棄却」という有難い決定がなされます。どの都税事務所に審査申出を行っても、よっぽど厳格な取決めがなされているのか、寸分変わらぬ文言で決定に至ります。
 
これは本当におかしな判決です。
固定資産税評価額は3年毎に見直されますが、家屋については3年毎に行っているのは物価変動の調整と経年減価の調整(いずれも係数を掛けるだけ)で、おおもとの評価額は当初の評価時点で決まっています。
おおもとの評価額に誤りがあったらいつまで経っても正しい評価額に戻るわけはなく、誤りを正すにはおおもとの評価額の誤りを正すしかないのです。
こちらは何もおおもとの評価額を計算した年次(例えば15年前)の評価額を直せと言っているのではなく(=15年前の税金を返せと言っているのではなく)、たまたま法律上、おおもとの評価額が参照されているので今年参照しているその評価額を正しくしなさい、と言っているだけです。
なぜ、それが効力の確定した評価額の争いということになるのでしょうか?
本来は3年毎に一から評価し直すべきところを、事務負担の軽減のためにお役所の勝手でおおもとの評価額を参照しているだけなのに、それを効力の確定した評価額という論法に出るところがいかにも姑息な手法で、その口車に裁判所が完全に乗ってしまったわけです。
 
裁判官という人たちは、時々どのような思考回路になっているのかと疑いたくなるときがあります。これ以外の固定資産税の判例を見ていても、途中までは全く正しいことを言っているのに判決になった途端、全く逆の結論になっているケース(え!、なんでそうなるの?という感じ)が多々あります。きっと判決は最初に決まっているのでしょうが、その理由の説明については本当は理解できていなくて、自分が逆のことを言っていることすら気づいていないのでは?と思ってしまいます。
 
それがついに光明が見えてきました!
 
三菱地所が1994年度に当初の評価額が計算された「赤坂パークビル」の固定資産評価を争って、2006年度に東京都固定資産評価委員会に審査申出を行い、棄却の決定がされたため東京地裁に取消訴訟を起こしてさらに棄却された事案について、2013年4月の東京高裁の判決で一部三菱地所の主張が認められたのです!
 
東京都は例によって「建築当初の評価についての争いをいつでも蒸し返せることになる」「時間がたてば(当初あやまりがあったのかの)判断が難しくなる」などと言って、「特別な事情がない限り訴えを認めるべきではない」と主張したのですが、高裁は「いったん争いが決着すれば蒸し返しはまれだ」として、固定資産税の評価基準額を適切に修正することを優先すべきだと判断し、三菱地所が当初の基準額の算出に誤りがあることを立証した以上は「(時間がたっていることは)修正しない理由にはならない」と、東京都の主張を退けたのです!(パチパチパチ)
 
なんて物事が分かった裁判官でしょう!裁判所を見直しました。
 
三菱地所も東京都も上告したため、残念ながらこの判決は確定しませんでしたが、最高裁の裁判官も物事が分かった人であることを期待して、進展を見守りたいと思います。
 
また、今、懲りずに山ほど出している東京都固定資産評価審査委員会への審査申出にどのような決定文が書かれるのかも楽しみです。

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