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2013年改正の耐震改修促進法 全国的に耐震診断義務化

東京都で始まった耐震診断義務化が全国に広がりました。

東京都の耐震診断義務化は、
・建物が特定緊急輸送道路という幹線道路に面し、
・その建物の高さがその幹線道路の道路幅の1/2以上
という条件だったので、延床面積が100㎡のペンシルビルでも対象になってしまいましたが、

この全国区の新耐震診断義務化は、
・3階建以上かつ延床面積5000㎡以上の、
・病院、店舗、旅館等
がメインターゲット(他にもターゲットはあります)となったため、基本的には大規模建築物が対象です。

大規模建築物の所有者は弱者ではないと言わんばかりに、今度の耐震診断義務化は随分と助成金(補助金)制度が手薄です。

東京都の耐震診断義務化において、耐震診断費用については、原則、全額の東京都負担を謳っています(本当は必ずしもそうなりません)が、今度の義務化は酷いです。
国は、
地方が耐震診断費用の1/2を負担するなら国も1/2負担するので、耐震診断費用は所有者負担はゼロです。
と嘯いていますが、日本全国、1/2負担する自治体はどこにもありません。それどころか、全く負担しない自治体が山ほどあります。

そうなるとどうなるか?

国が耐震診断費用の1/3を負担しておしまいです。なんと所有者負担が2/3です。それも、耐震診断費用が国が定める単価(この単価は東京都の耐震診断義務化とほぼ同じです)以下で納まった場合の話であって、構造図面が無い等で費用が超過した場合の超過分は全部所有者負担です。

わかりやすく数字で示すと、仮に延床面積が5000㎡で耐震診断費用が1000万円掛かるとします。
国が定める単価で計算した耐震診断費用は823万円なので、補助は823万円×1/3=274万円、所有者負担は、1000万円-274万円=726万円です。
たまたま5000㎡以上の建物の所有者だったために、いきなり税金が726万円掛かるのと同じです。
(これは国の法律で決まった義務ですから税金と一緒で逃げられません。)

しかも、たちの悪いことに、この税金を払った所有者の多くは、耐震診断の結果、耐震性能が不足する、という現実を目の当りにすることになります。
税金を払っておしまいじゃなく、税金を払ってさらに苦しい立場に追い込まれるのです。
自発的に耐震診断をして、補強を行うというのであれば納得がいきますが、強制的に耐震診断をやらされて、その費用を負担させられて、今度は多額の費用を掛けて補強するかどうかを迫られるのです。
耐震改修の助成率は最悪のケース(自治体に助成制度が無い場合)は、なんと11.5%です。90%の費用が所有者負担です。

これもわかりやすく数字で示すと、仮に延床面積が5000㎡で耐震改修費用が3億円掛かるとします。
国が定める単価で計算した耐震改修費用は2.435億円なので、補助は2.435億円×11.5%=2800万円、所有者負担は3億円-2800万円=2.72億円です。
仮にこれが収益不動産だとすると、東京に所在したとしても年間NOI(年間純収入)は1億円程度でしょうから、3年分の純収入が吹っ飛びます。(補強工事に1年掛かったとすると4年分が吹っ飛びます。)
しかも、1年間の工事の間、どこかで待ってくれるテナントなんていませんから、通常は明渡が必要になり、明渡料が発生します。そして、補強工事を行ってから新規にテナント募集しても使い勝手は通常悪くなりますから賃料は下がります。
こんなことをやっていたら間違いなく不動産賃貸事業は成り立たなくなります。
とはいえ耐震改修しなかったら(耐震改修は努力義務ですので耐震診断と違って必ずしなければならないわけではありません)、今度はテナントが心配で出て行ってしまうかもしれませんし、新規に募集するときは重要事項説明で耐震診断を行ったことを開示しないといけなくなります。

どちらに転んでも地獄が待っています。

国はこの辺りを一体どう考えているのでしょうか?
耐震化は必要なことですが、国が強制的にそれをやらせるならばお金を全額出せ、と言いたいのは私だけでしょうか??


固定資産税還付の道が開けるかも?注目の新高裁判決!

「既存家屋の評価を争う際に、建築当初の評価の誤りを無制限に主張できるとすると、効力の確定した建築当初の評価額についての争いが蒸し返されることになり、固定資産の評価に係る審査申出制度を定めた地方税法の趣旨に反する。原則としてこれを禁じ、例外的に建築当初において適切に評価できなかった事情がその後に判明した場合や、建築当初の評価の誤りが重大で、それを基礎に比準価格方式により評価することが適切な時価の算定方法として不合理であると認められるような場合を除き、建築当初の評価を無制限に争うことを認めるのは相当でない。」

東京都主税局が金科玉条のごとく唱える平成17年10月21日の東京地裁判決です。(その後、平成18年6月28日東京高裁判決による控訴棄却、平成19年12月4日最高裁判決による上告棄却により確定)
 
東京都都税事務所に審査申出を行うと、どんなにこちらの主張内容が正しく、抗弁のしようがないものであったとしても、最後には東京都固定資産評価審査委員会が上記判例を引用した後、「建築当初において適切に評価できなかった事情や、建築当初の評価の誤りが重大である場合等にあたりません。従って本件家屋の評価は、適正、妥当なものです。よって棄却」という有難い決定がなされます。どの都税事務所に審査申出を行っても、よっぽど厳格な取決めがなされているのか、寸分変わらぬ文言で決定に至ります。
 
これは本当におかしな判決です。
固定資産税評価額は3年毎に見直されますが、家屋については3年毎に行っているのは物価変動の調整と経年減価の調整(いずれも係数を掛けるだけ)で、おおもとの評価額は当初の評価時点で決まっています。
おおもとの評価額に誤りがあったらいつまで経っても正しい評価額に戻るわけはなく、誤りを正すにはおおもとの評価額の誤りを正すしかないのです。
こちらは何もおおもとの評価額を計算した年次(例えば15年前)の評価額を直せと言っているのではなく(=15年前の税金を返せと言っているのではなく)、たまたま法律上、おおもとの評価額が参照されているので今年参照しているその評価額を正しくしなさい、と言っているだけです。
なぜ、それが効力の確定した評価額の争いということになるのでしょうか?
本来は3年毎に一から評価し直すべきところを、事務負担の軽減のためにお役所の勝手でおおもとの評価額を参照しているだけなのに、それを効力の確定した評価額という論法に出るところがいかにも姑息な手法で、その口車に裁判所が完全に乗ってしまったわけです。
 
裁判官という人たちは、時々どのような思考回路になっているのかと疑いたくなるときがあります。これ以外の固定資産税の判例を見ていても、途中までは全く正しいことを言っているのに判決になった途端、全く逆の結論になっているケース(え!、なんでそうなるの?という感じ)が多々あります。きっと判決は最初に決まっているのでしょうが、その理由の説明については本当は理解できていなくて、自分が逆のことを言っていることすら気づいていないのでは?と思ってしまいます。
 
それがついに光明が見えてきました!
 
三菱地所が1994年度に当初の評価額が計算された「赤坂パークビル」の固定資産評価を争って、2006年度に東京都固定資産評価委員会に審査申出を行い、棄却の決定がされたため東京地裁に取消訴訟を起こしてさらに棄却された事案について、2013年4月の東京高裁の判決で一部三菱地所の主張が認められたのです!
 
東京都は例によって「建築当初の評価についての争いをいつでも蒸し返せることになる」「時間がたてば(当初あやまりがあったのかの)判断が難しくなる」などと言って、「特別な事情がない限り訴えを認めるべきではない」と主張したのですが、高裁は「いったん争いが決着すれば蒸し返しはまれだ」として、固定資産税の評価基準額を適切に修正することを優先すべきだと判断し、三菱地所が当初の基準額の算出に誤りがあることを立証した以上は「(時間がたっていることは)修正しない理由にはならない」と、東京都の主張を退けたのです!(パチパチパチ)
 
なんて物事が分かった裁判官でしょう!裁判所を見直しました。
 
三菱地所も東京都も上告したため、残念ながらこの判決は確定しませんでしたが、最高裁の裁判官も物事が分かった人であることを期待して、進展を見守りたいと思います。
 
また、今、懲りずに山ほど出している東京都固定資産評価審査委員会への審査申出にどのような決定文が書かれるのかも楽しみです。

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