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耐震診断

新耐震基準で何が変わったか?③

旧耐震基準から新耐震基準への移行で、大きく変わった点として、想定地震の大きさが変わったこと、大きな地震に対抗するために強度だけではなく変形性能を考慮するようになったこと、さらに、地震力の高さ方向の違いが考慮されるようになったことを説明しました。
さらにもう一つ変わったのは、建物バランスの考慮です。

段ボール箱をイメージしてください。段ボール箱の開口が横になるようにおいて、横から押してみます。

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どうでしょうか?底のついた面はびくともしませんが、開口側は簡単に潰れてしまいますね。

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このダンボールの、底のついた方は「剛性が高い」のに、開口側は「剛性が低い」からこうなります。
両側が塞がっている段ボールが潰れないギリギリの力の半分の力でこのダンボールを押した場合に、半分塞がっているから大丈夫かというとそうはなりません。
このことから分かるように、全体では必要な強度があってもその強度が偏っていると力に耐えることが出来ないのです。

建物の場合も同じで、平面方向あるいは高さ方向の剛性バランスが悪い(剛性が高い部分が偏っている)と、全体では必要な強度があっても想定する地震力には足らないことになります。

ニュージーランドのクリストンチャーチの地震で、語学学校が崩壊し、痛ましい人命被害がありました。
建築当時のニュージーランドの耐震基準にはバランスの考えがなかったため、強度が全てコア部分で確保されていたのが一番の原因です。強いコア部分は残りましたが、それ以外の部分が崩壊してしまったのです。(あの建物の場合は、そもそも必要な強度を有していなかったようですのでそれも原因です。)

新耐震基準では、建物バランスを偏心率(平面方向のバランス)・剛性率(高さ方向のバランス)の2つの指標でチェックして、バランスが悪い場合は、ごく稀に発生する地震(≒震度6強≒1000ガル)を割り増すことにしています。この割増は結構強烈で、ちょっとバランスが悪いとすぐに1.5倍程度の割増率になります。建物バランスの悪さはそれほど建物の耐震性能に影響を与えるということです。

かように建物バランスは耐震性能に重要な要素にもかかわらず、旧耐震基準では考慮されていませんでした。
従って、建物の基本耐震性能の絶対値(合計値)は高くても地震には耐えられない可能性があるのです。
耐震診断では、新耐震基準と同様に建物バランスを考慮して計算を行います。耐震診断の結果が悪くても、その理由が建物バランスにある場合は、大掛かりな補強をするのではなく、バランスをよくすることによって改善できるケースがあります。


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