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耐震診断

耐震基準の移り変わり

世界的にも大地震国である我日本に耐震基準が導入されたのは、関東大震災(1923年)以後です。それまでの建物は何と、重力に対してのみ安全に設計されていました。

初めて地震、すなわち水平方向の力に対する構造基準が作られたのは関東大震災の翌年、1924年です。当時の『市街地建築物法』(1920年施行)が改正されて、水平震度=0.1という概念が導入されました。
水平震度=0.1とは、重力×0.1の地震力(1000トンの建物であれば100トンの地震力)が真横から静的に掛かるという設定です。重力は980ガルですから、水平震度=0.1は約100ガルに相当します。地震は振動現象ですが、建物の設計においては振動ではなく、ゆっくりと横からその力で建物を『押す』という感覚で構造計算上、検討します。現在でも超高層建物や免震建物等、一部の特殊な建物を除き、殆どの建物はこの静的に地震力で『押す』方法で構造計算が行われていますが、その手法が初めて取り入れられたのがこの、水平震度=0.1の導入です。

過去の地震 法令 耐震基準の内容 地震被害レベル 耐震診断の必要性
  1920年 市街地建築物法施行 重力のみ
(耐震規定なし)
あり
関東大震災 1923年    
  1924年 市街地建築物法改正 水平震度=0.1
  1950年 建築基準法施行 水平震度=0.2
十勝沖地震 1968年    
  1971年 建築基準法改正 せん断補強の強化
宮城県沖地震 1978年    
  1981年 建築基準法改正 新耐震基準 なし
兵庫県南部地震 1995年    
  1995年 耐震改修促進法 (耐震化の促進)

このとき、水平震度=0.1に対して建物が安全であるという判断は、水平震度=0.1の水平荷重によって建物に生ずる応力が、建物の有する強度の1/3以下となるかどうかで行っていました。
細かく言うと、自重の10%の水平力によって建物を構成する柱や梁などに生ずる応力のいずれもが、それぞれの部材の有する強度の1/3を超えなければOKということです。
安全率が3倍あるということになりますので、逆に言えば、限界は水平震度=0.3ということになります。つまり想定する最大地震は約300ガルということです。

じつは、この水平震度=0.3を限界とする考え方は、新耐震基準になるまでずっと続きました。

1950年に制定された建築基準法では、水平震度=0.1→0.2に改められましたが、同時に、有する強度に対する安全率が2/3に改められましたので、結局、限界は水平震度=0.3のままだったのです。つまり、想定する最大地震は相変わらず、約300ガルです。

1924年 市街地建築物法

震度0.1の地震に対して、耐えられること。(建物強度の1/3を耐えられる強度として計算)

1950年 旧建築基準法(旧耐震基準)

震度0.2の地震に対して、耐えられること。(建物強度の2/3を耐えられる強度として計算)

この2つは同じ意味

関東大震災の大惨事を受けて大正時代に制定された耐震基準が、新耐震基準に変わる1981年まで、基本的にはずっと見直されることがなかったのです。


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