HOME > 耐震診断 > 現地調査とは?

耐震診断

現地調査とは?

これから建てる建物を構造設計するのと違い、耐震診断は「既に建っている建物」の構造計算を再度行うわけですから、設計図面だけに基づいて計算したのでは正しい結果が得られません。

下記のような点で実際の建物と設計図面が相違する可能性があるからです。

設計図面どおりの構造部材断面で施工されていない。
設計図面どおりの配筋で施工されていない。
設計図面どおりのコンクリート強度が出ていない。
設計図面にあるRC壁が撤去されている。
設計図面にないRC壁が新設されている。
増改築がされている。
用途変更されて設計図面と荷重条件が変わっている。
設備が増設されて荷重が増えている。
コンクリートの中性化が進行している。
ひび割れが進行している。
不同沈下が進行している。・・・等々

従って、耐震診断計算(構造計算)に先立ち、現地調査を行って、設計図面との照合や経年変化の把握等を行う必要があります。

主な調査項目は次のとおりです。

構造部材断面調査

構造部材断面調査 柱・壁・梁等の構造部材が設計図面と相違ないか、目視及び実測により確認します。特にRC壁は耐震診断上重要なので、開口の変更等が行われていないか慎重に調査します。 また、配筋が設計図面と相違ないか、代表的な部材について鉄筋探査器を用いて確認します。場合によっては斫り調査を行って鉄筋の径などを確認します。


外観履歴調査

外観履歴調査 使用状況(用途等)が設計図面と相違ないか、増改築等が行われていないか、被災等の経歴がないか等を調査します。また、ひび割れ、部材のたわみ・変形、仕上材の剥落等の状況を全数確認します。ひび割れの発生状況、レベル測量等により不同沈下の有無を確認します。
ひび割れが深い場合は、直角回析波法等により非破壊で深さを測定します。


コンクリートコア抜き調査

原則、各階3か所、RC壁等から75~100φ×10~20cm程度のコンクリートコアを採取し、コンクリートの圧縮強度、中性化試験等を実施します。コアの採取にあたっては予め鉄筋探査器により鉄筋位置を探査し、鉄筋を傷つけないよう注意します。
コンクリートコア抜きした跡は、無収縮モルタルを充填して補修します。

接合部調査

鉄骨造の場合、梁・柱接合部、柱・基礎接合部、筋違接合部等の接合部の調査が特に重要です。過去の大地震でも鉄骨造の建物は殆ど接合部で破壊しているためです。
設計図面と照合し、ボルトの本数・径、溶接の種類等を確認します。また、超音波探傷により溶接欠陥の有無を確認します。

非構造部材調査

東日本大震災でも天井の落下が問題となりました。天井に限らず、旧耐震建物においては、屋根ふき材、外壁、建具等の非構造部材の多くについて構造検討を十分に行わずに施工されている場合が殆どですので、大地震時における人命への影響がないかを重点的に確認します。

建築設備調査

非構造部材と同様に建築設備の多くは構造検討が十分に行われずに施工されている場合が殆どですので、特に高架水槽の架台等の高所設置物について、大地震時における人命への影響がないかを重点的に確認します。

建築敷地調査

建物に限らず、建物周囲の敷地についても確認し、特に大規模擁壁等崩壊の危険性があるものについて、大地震時における人命への影響がないかを重点的に確認します。

以上のような現地調査の結果を踏まえて、耐震診断計算を行います。
具体的には現地調査結果を次のように耐震診断計算に反映させます。

・設計図面と異なる部分は、現状に合わせて設計図面を補正したうえで、構造計算プログラムに入力し、適正に建物のモデル化を行う。
・コンクリート強度は設計図面に示された設計基準強度ではなく、コンクリート圧縮試験結果に基づく補正強度を採用して耐震診断計算を行う。
・外観履歴調査、コンクリート中性化調査結果に基づいて、耐震診断とは何か?③のIs算定式にあるT(経年劣化の程度による指標)を算定して、耐震診断計算を行う。


このページのトップへ