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耐震診断

PMLと耐震診断の違いは?

PML(地震リスク評価)は、Probable Maximum Loss の略で、地震による被害を予想する指標です。
日本語に訳すと『予想最大損失率』となります。

よく耐震診断と混同され、不動産のプロの方でも、「耐震診断の結果、問題なかった」と言って、PMLレポートを提示されることがありますが、PMLと耐震診断は全く別のものです。

PML は米国の火災保険分野における保険情報の一つとして生まれ、その後、地震保険などの巨大災害のリスク評価の分野でも用いられるようになりました。
日本においても、1966年以来、地震保険の支払い限度額の設定指標としてPMLが用いられてきましたが、近年の不動産証券化の定着に伴い、PMLは不動産デューデリジェンスの一指標として一般化しました。

不動産デューデリジェンスの指標として用いられるPMLは、再現期間475年相当の地震(475年に一度の周期で起こると予想される最大規模の地震)に遭遇した場合の損害率で定義されます。

475年に一度の大地震の規模は地域によって異なり、地震が建物に与える影響は地盤によって異なりますので、対象建物が所在する地域及び地盤特性を考慮してPMLは算出されます。
対象建物が立地する特定の地域及び特定の地盤から対象建物に入力される地震動のデータベースについては、建築基準法の規定、建築基準法に準拠している耐震診断基準の規定よりも遥かに精緻で、建物に入力される地震動の想定までの段階では、耐震診断を上回る精度があると思います。

但し、肝心の建物については、PML計算に入力する情報は限られています。建築年次、構造種別、高さ等、建物概要に関する情報が中心で、建物の特性が正しく反映されているとは到底言えません。

また、PMLは損害率として、『予想される損害額÷当該建物の再調達価額(新築する場合に必要となる工事費相当額)』で求められますので、あくまでも物的被害額がそのベースとなる概念です。

通常、新耐震基準の建物はPML値が10%以下となり、旧耐震基準の建物はPML値が20%を超えることが多いため、一応の目安としてPML値20%が判断の基準とされていますが、上記のとおり、PML値はあくまでも物的被害の指標ですから、ここでいう10%、20%というのはあくまでも、建築総コスト×〇〇%で被害額を出すためのもので、PML値が10%以下だから安全、PML値が20%超だから危険、ということにはなりません。

それに対して、耐震診断は何度も説明したように、人命を守れるかどうか、が判定の基準となっています。
ですから、耐震診断でOKでも、または耐震補強してOKになったとしても、中破以内の建物の損傷は許容しています。人命は守られても、建物は再使用不能、PML値で言えば100%の状態ということも当然あり得ます。

目的が全く異なるのです。

本当は、耐震診断はもちろんのこと、通常の新耐震基準による構造設計においてもPMLが導入している地盤評価の手法を取り入れた方がよいのかもしれません。
建築基準法の規定は結構大雑把で、本州の半分くらいの地域ではどこに建てても地面から上の構造は殆ど同じになる計算方法になっているのですから、あまりにも実情にそぐわないと思います。
なお、建築基準法で規定している中でも、もっと高度な計算手法(振動解析)では、もっとちゃんと特定の地盤の影響を考慮するようになっています。


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