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耐震診断に幾ら掛かるのか?

世間でまことしやかに言われている耐震診断費用の目安は下記のとおりです。

1,000~2,000円/㎡×延床面積(㎡)

建物規模や構造種別、用途によって単価は変わってくることを考慮して単価に幅を持たせているのでしょうが、じつは全く目安にもなりません。

当事務所は、過去数多くの耐震診断を行っていますが、試しに単価を計算してみると、200円/㎡を切っているものもあれば、3,500円/㎡を超えているものもあり、1,000~2,000円/㎡の範囲に入っているものは極わずかです。確かに全部を平均すれば1,100円位になりましたから入っていると言えば入っていますが。。。。肝心なのは、ある特定の対象物件の耐震診断に幾ら掛かるか?ということですので個別性が高過ぎて平均値など何の役にも立ちません。

少し考えればわかることです。
新築設計において、例えば20,000㎡の病床付総合病院が20,000㎡の平家倉庫の2倍以内の設計単価で出来るとは誰も思いませんし、50㎡の住宅が10万㎡の事務所ビルの2倍以内の設計単価で出来るとも誰も思いません。㎡当たりの手数が全く異なるのは明らかだからです。
耐震診断も構造計算ですから、新築設計で言えば、構造設計の半分以上の手数が掛かり、さらに新築設計にはない現地調査(これはさらに個別性が高い)が多いときには費用の半分程度を占めます。
個別案件ごとに必要となる手数が全く違うのです。

ですから、どうしても個別見積になります。そして見積額は、費用の殆どが人件費ですのでその建物の耐震診断に何人掛かるか、が基本になります。

ただ、同じ建物なら誰が見積もってもだいたい同じ見積額になるか、というとこれまた、そういうわけではありません。

だいたい耐震診断を手掛けているのは次のような組織です。

・組織設計事務所
・大手・中堅ゼネコン
・意匠設計事務所
・構造設計事務所

組織設計事務所、大手ゼネコンはオールラウンドプレーヤーですので構造に関することは何でもやります。当然、耐震診断もやります。中堅ゼネコンになると通常の構造設計はやるけれども耐震診断はちょっと・・・、という場合もあります。
この人たちは高給取りなので耐震診断に要する人数に掛け算する人件費単価が高くなり、耐震診断に掛かる人数が意匠設計事務所や構造設計事務所と同じでも見積額が高くなります。
ゼネコンの場合は逆に、今後発注される補強工事が独占的に受注できる立場を得るために、採算度外視の営業価格で見積を出すことも考えられ、その時は極端に安くなるでしょう。そんなに補強が必要になりそうもない建物の耐震診断には目もくれないかもしれません。

意匠設計事務所は、普通は構造設計を外注していますので、耐震診断を受託しても当然外注になります。外注先は、というと構造設計事務所なので、結局は構造設計事務所次第です。

構造設計事務所は、構造に関することなら新築でも耐震診断でも基本やります。ただ、耐震診断に要求される知識は意匠・設備まで広範囲に及びますので、普段、構造設計の外注だけを受けている事務所だと対応しきれない可能性もあります。
この人たちは組織設計事務所や大手ゼネコンに比べて低給取り(ごめんなさい)なので、耐震診断に要する人数が同じならば、組織設計事務所や大手ゼネコンよりも見積は安くなります。

なお、構造設計者なら誰でも耐震診断が出来るかというと、そういうわけではありません。必要な構造的知見が新築設計とはかなり異なるので、内科の医者が外科の診断が出来るのか、程度に考えた方がよいです。夜間緊急医療センターなら、内科の先生しか居なくて外科を診てもらうことになっても仕方ないですが、昼間に行くならちゃんと外科の先生のところに行きますよね。それと一緒です。

また、上記は「耐震診断に要する人数が同じ」でも、組織によって見積額が変わってくるということを説明しましたが、じつは「耐震診断に要する人数が同じ」という前提に間違いがあります。

新築設計と違って、「耐震診断に要する人数」はそう簡単に読めないからです。診断計算はもちろんですが、現地調査はなおさらです。さらに設計図面が無いとなると、「耐震診断に要する人数」の数え方は5倍以上の開きが生じるかもしれません。

読めないことに対して、人はどうするかというと余裕を見るわけです。耐震診断の経験が豊富だとそれだけ読めるようになり、余裕を見なくなり、「耐震診断に要する人数」が減っていきます。結果、「耐震診断に要する人数」が少なくて、掛け算する人件費単価が低いところが、見積が一番安い、ということになります。

経験が豊富かどうかはなかなか判断がつきませんが、最初に掲げた目安「1,000~2,000円/㎡×延床面積(㎡)」で見積を出してくるようなところは少なくとも論外、ということはいえます。「耐震診断に要する人数」がわかりません、と言っているのですから。

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